普段目にすることのない鉄道(保線)工事。しかも黒部峡谷という特殊な環境です。
鉄道用語は独特な漢字表現があったりしますが、正規の表現を控え、できるだけ分かりやすく解説します。
たくさんの写真をスライドショーで紹介しますので、ぜひご覧ください。
仕事を知る
同じ建設業界の中からも、鉄道関係は「キツイ」と評判です。
それでも60、70代も元気に活躍中という謎。鉄人なの?
実際に現場で働く当社のみなさんのインタビューや、
1年間の働き方のデータ、仕事内容をご紹介しながらその謎に迫ります(!?)
普段目にすることのない鉄道(保線)工事。しかも黒部峡谷という特殊な環境です。
鉄道用語は独特な漢字表現があったりしますが、正規の表現を控え、できるだけ分かりやすく解説します。
たくさんの写真をスライドショーで紹介しますので、ぜひご覧ください。
列車の走行に伴い、レールに横圧や振動が生じることで、レールに狂いが生じてきます。
レールの狂いにはレール間隔(軌間狂い)、左右の高低差(水準狂い)などがあり、これらの狂いが大きくなると、列車が揺れて乗心地が悪くなり、やがて脱線する原因となってしまいます。
軌間狂いは、木製のまくらぎ区間では、レールとまくらぎを締結している犬くぎを引き抜き、標準ゲージという計測器で軌間を測りながら、再び犬くぎを打ち込み締結します。
スパイキハンマーという柄の長さが1mほどもあるハンマーで犬くぎを打ち込む姿は、小気味よく本当にカッコイイです。
列車の走行で繰り返し与えられる荷重や振動によって、レールやまくらぎの下に敷き詰められている砕石(道床と言います)が、ゆるんで広がったりすることで、レールに高低(高低狂い)がでてきます。
道床つき固めは、その高低狂いが生じている箇所の道床にタイタンパーという振動機を差し込んで、振動によってまくらぎの下に砕石を押し込み、高さを調整しながら道床を適切な密度に締め固める作業です。
このタイタンパー。かなりの重量があって振動するので、とても大変な作業なのですが、残念ながらレールやまくらぎを交換した際にも必ず行う鉄道(保線)工事で最も多い作業です。。。
まくらぎは左右のレールの間隔を一定に保持しながらレールを支えるとともに、列車の走行による荷重や振動を道床に広く分散させる役割ですが、経年によりレール間隔を保持する力が弱くなるなど、定期的に交換が必要です。
交換は、まず敷き詰められている砕石を取り除き、まくらぎを引き抜くのですが、トロッコ電車は狭いトンネル区間が多く、一旦斜めにしてからでないと引き抜けません。そのため砕石を取り除く面積も広くて大変です。
まくらぎには、木製の木まくらぎの他、コンクリート製のRCまくらぎや合成樹脂製の合成まくらぎなどがあり、強度や耐用年数の観点からコンクリート製や合成樹脂製に切り替わってきています。
しかし、コンクリート製は木まくらぎに比べて高さがあるため、これを設置する際は、道床の下を掘削しなければならず、道床の下は困ったことに大概岩盤ですので、重機が入る場所ではミニバックホーで、それ以外はハンマドリルなどを用いて破砕していきます。時間が掛かる作業ですので終電後の夜間作業で行うことが多いです。
合成樹脂製は、とにかく硬くて犬くぎがなかなか貫入できないのが辛いところ。倍以上叩かなければいけません。また、角が立っているので運搬時や据え付けの際にも注意が必要です。
レールは、列車が走行する際に車輪と接触することで少しずつ摩耗していきます。また、トンネル区間は常に湿潤状態にあるため腐食の進行が速いなど、列車の安全な運行には、こまめな点検や交換が欠かせません。
レールを締結している犬くぎや締結装置を外し、レール山越器で新しいレールを吊り上げ、旧レールと入替ます。
そして、再びレール接続部分に締結装置を取り付け、犬くぎでレールとまくらぎを締結、タイタンパーでつき固めを行います。
他にも、現地でレールを曲げたり、レールボンドと言ってレールとレールを電気的に接続するしたりします。
レールに電気が流れているなんてはじめて知りました。軌道回路と言って列車がそこにいるかいないかを電気の流れで検出して信号機の色を変えているそうです。
それにしても、初めて見る器具装置が多くて、どれも「なるほど!」と感心するアイデアグッズばかりです。
分岐器とは列車が2方向以上に進路変更する装置で、レールが交差するとても複雑な構造をしています。
新分岐器をあらかじめ線路脇などで組立てておき、旧分岐器を解体・撤去したのちに一式ごそっと入れ替えます。
当社が手掛ける鉄道(保線)工事で、もっとも規模が大きく見応えのある作業です。
非常に重い装置の交換になりますので、通常は終電後の夜間に行うことが多い作業です。
黒部峡谷トロッコ電車の欅平駅から先の区間、竪坑エレベーターを上がった欅平上部~黒部川第四発電所前が上部軌道です。
この区間は高熱隧道を通り、高温多湿で硫化水素の影響も受けるため、定期的にレールを洗浄しています。
それでもレールの腐食が早く、2年ごとに交換するそうです。
上部軌道と黒部トンネルをつなぐインクライン。
インクラインとは「incline:傾斜面」の意で、斜面にレールを敷き、動力で荷物などを運ぶ装置の総称で、一種のケーブルカーです。
てっきり「インク・ライン」だと勘違いしていて、どんな意味なのか疑問に思っていましたが、ようやくスッキリしました。
さて、インクラインのレール締結ボルトの点検作業ですが、傾斜34°のトンネル内で危険なため、インクラインの車体前面に転落防止の鋼板を取り付け、作業員はハーネスを着用して作業します。
ウド谷は、例年大きな雪崩が発生する場所なので、トロッコ電車の休業期間中は線路も橋げたも取り外します。
雪解けの状況を見ながら、4月下旬に再設置して、欅平までの全線開通に備えます。
仮設足場や転落防止網などの安全対策を設置してから作業を進めますが、高所作業でまくらぎやレールなどの重量物を取り扱いますので注意が必要です。
ここでは「カニクレーン」というとてもコンパクトな移動式クレーンが活躍します。4本のアウトリガーを張り出して、狭くて凸凹した場所でもしっかり支える優れものです。
橋梁部のまくらぎは橋まくらぎといって、橋げたに直接配置し、レールを設置した後にフックボルトで橋げたにしっかりと固定していきます。
そう言えば、橋げたをよく見ると古レールが使われていました。
このように古レールは鋼材として有効に再利用されているのですね。